過半数代表者の選出について

2019/04/05 ブログ, 坂元貴洋のBlog, 新着情報 by sakamoto

1 過半数代表者とは何か

 会社や企業や事業主(以下、「使用者」といいます。)は、以下の①~⑤をするときには、そのたびごとに、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合、労働者の過半数を代表する者(この人が「過半数代表者」です。)を選出しなければなりません。注意していただきたいことは、この過半数代表者は、企業全体ではなく、事業場(工場・事務所・店舗など)ごとに選出しなければならないということ、一般従業員のみならず、管理監督者・パートタイマー・アルバイト等も含めた労働者の過半数から選出しなければならないということ、過半数代表者には任期を定めることができず、以下の①~⑤をするたびに選出する必要があるということです。

 ① 時間外労働や休日労働を可能にするために、過半数代表者と三六協定を 締結すること(労基法36条1項)

 ② 就業規則の作成または変更にあたり、過半数代表者の意見を聴取すること(労基法90条1項)

 ③ 変形労働時間制やフレックスタイム制を導入するために、過半数代表者と協定を締結すること(労基法32条)

 ④ 高度プロフェッショナル制度において対象業務等を決議する労使委員会の委員の半数を過半数代表者が任期を定めて指名すること(労基法41条の2第3項)

 ⑤ 貯蓄金管理制度(労基法18条2項)、賃金控除(24条1項但書)、休憩の一斉付与の例外(34条2項但書)、割増賃金支払いの例外(37条3項但書)、事業場外労有働のみなし制(38条の2第2項)、専門業務型裁量労働制(38条の3第1項)、企画業務型裁量労働制(38条の4第2項1号)、有給休暇の時間単位付与(39条4項)、計画年休・年休の支払額(39条5項・6項但書)

2 選出の方法

 ⒜ 管理監督者でないこと(労基法施行規則6条の2第1項1号)

 ⒝ 労使協定等をする過半数代表者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であること(同項2号)

 ⒞ 使用者の指名などその意向に沿って選出された者ではないこと

 要するに、過半数代表者の選出方法については、各労働者の意向を反映させることのできる民主的な手続きが必要とされます。⒝の「投票、挙手等」の「等」には、労働者の話し合い、持ち回り決議等労働者の過半数が過半数代表者の選出を支持していることが明確になる民主的手続きが該当する(平成11年3月31日基発169号)ので、選挙を行う場合でも挙手・回覧の方法でもよいですし、選挙でなくても回覧による信任も許されるでしょう。

 なお、使用者は、過半数代表者であること、過半数代表者になろうとしたこと、または過半数代表者として正当な行為をしたことを理由に不利益な取扱いをしてはならないですし(労基法施行規則6条の2第3項)、使用者は過半数代表者がその事務を円滑に遂行できるよう必要な配慮を行わなければなりません。

3 過半数代表者を適法に選出しなかったらどうなるか

 ⑴ 最高裁平成13年6月22日第2小法廷判決

 事業場の従業員で組織する親睦会の代表者をそのまま過半数代表者として①の三六協定を締結しましたが、親睦会の代表者の選出目的・選出方法が労使協定を締結する代表者を選出する目的での投票・挙手等ではないことから、親睦会の代表者は過半数代表者ではなく、三六協定は無効であると判断されました。これにより、三六協定を締結しないと残業をさせることはできませんから、使用者による残業命令は無効であり、労働者が残業命令に従わないことを理由にされた解雇は無効とされました。

 ⑵ 長崎地裁平成29年9月14日判決

 選出目的を明らかにした投票・挙手等による選出が行われていなかったことから、③の1年単位の変形労働時間制に関する労使協定は無効と判断されました。

 また、選出目的を明らかにした投票・挙手等により選出されなかった者が過半数代表者として労働基準監督署に提出された意見書に署名押印したとしても、その意見書の存在から、労働者が②の就業規則の不利益変更に同意したとの事実を推認することはできないと判断されました。

 これにより、使用者に未払賃金1670万円余りと利息の支払いが命じられました。

4 まとめ

 このように、過半数代表者の選出にあたり、⒝に違反する使用者が多いです。労働政策研究・研究機構の調査によれば、「投票や挙手」により選出した使用者は30.9%にとどまります。また、上記最高裁判例で否定された「親睦会の代表者等、特定の者が自動的になる」は6.2%であり、⒞で禁止された「使用者が指名」は21.4%にもなります。

 使用者にとって、労使協定の効力が否定されることによる不利益は大きく、過半数代表者の選出が潜在的な経営リスクになっています。他方、労働者にとっては、過半数代表者の選出が違法であることを主張すれば有利となる事案もあると考えられます。


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