年5日の年休取得義務への対応

2019/02/26 ブログ, 坂元貴洋のBlog, 新着情報 by sakamoto

働き方改革―年休取得義務化―

1 はじめに
労働者に年5日間の年次有給休暇(以下、「年休」といいます。)を取得させる義務を使用者に負わせる労働基準法39条7項及び8項が、今年の4月から施行されます。去年の10月時点でこの新法への対応が完了していると答えた企業は、わずか4割弱にとどまるなど(10月22日付日経新聞参照)、対応に苦慮しているものと思います。しかし、新法に対応しなければ、30万円以下の罰金が科されることになります。
そこで、今回は、この新法への対応方法を考えていきましょう。

2 新法の適用対象の労働者
使用者は、週5日労働の人が雇入れの日から起算して6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤したときは、10日間の年休を与えなければなりません。分かりやすく言うと、4月1日入社の普通の従業員は、10月1日から翌年の9月30日までの1年間、年休を10日間取得できるということです。新法により年5日の年休を与えなければならない対象労働者は、年休の日数が10日以上である労働者、つまり週5日労働の人であれば、6か月間継続勤務した人になります。
なお、週4日労働または1年間の労働日数が169~216日間の人は、3年6か月の継続勤務で、週3日労働または1年間の労働日数が121~168日間の人は、5年6か月の継続勤務で、10日以上の年休が取得できるようになるので、このような従業員も新法の適用対象になります(労働基準法(以下、「労基法」といいます。)39条3項)。

3 年休取得義務の日数
新法により、使用者は、上記対象労働者に対して、5日間の年休を取得させる義務を負います。ただし、労働者の時季指定(労基法39条5項。例えば、労働者が●月●日に年休を取りたいと申し出たため、その日に年休を取得させた場合。)または計画的付与制度(同条6項。例えば、労働組合との協定で、労働者に●日間の年休は●月●日他に取得させると決めた場合。)により年休を与えた場合、労働者がすでに取得した年休の日数分は5労働日から控除することができます(同条8項)。
(例)

労働者が自ら取得した日数 使用者の年休を取得させる義務
5日取得 義務なし
3日取得+計画的付与2日 義務なし
3日取得 2日年休を取得させる義務あり
計画的付与2日 3日年休を取得させる義務あり

しかし、注意点が二つあります。一つは、使用者が労働者に年休を取得する日を指定して年休を取得するよう指示したとしても、仕事が忙しいなどの理由により年休を取れずに出勤してしまった場合、使用者は年休取得義務を果たしたとはいえません。もう一つは、年休を時間単位で付与する制度を採用している場合(労基法39条4項)、労働者が自らの意思によって時間単位年休を希望し取得することはできるものの、使用者側からは時間単位年休を指示しても、年休取得義務を果たしたとはいえません(労基法39条7項が「第1項から第3項までの規定による有給休暇」に限定し、4項を含めていないから)。

4 時季指定の基準日
使用者は、基準日(雇い入れ後6か月を経過した日)から1年以内に5日間時季指定(●月●日に年休を取得するよう指示すること)して年休を取得させる必要があります。
入社日によって基準日(入社日の6か月後の日)も異なるので、入社日の異なる労働者を個別的に管理するのは非常に煩雑です。人の手による管理を脱し、勤怠管理システムなどを導入して適切に年休管理を行わなければ、年休取得義務を果たすことは困難といえるでしょう。

5 年休付与の前倒し
労働者に年休が付与されるまでに6か月というタイムラグが生じ、シンプルに1年ごとの年休管理ができません。これを解消するために、年休付与を前倒しして、入社と同時に10日間の年休を与える方法があります。入社日である4月1日に10日間の年休を与えることとした場合、翌年の3月31日までに5日間の年休を取得させることとなります(労基法39条7項ただし書、平30.9.7 基発0907第1)。
また、4月1日入社の従業員に対して、初年度は10月1日を基準日にしてその日に年休を付与し、翌年度は4月1日を基準日にしてその日に年休を付与する場合、通常は初年度の10月1日~翌年9月30日までの1年間に5日間年休を取得させ、翌年度の4月1日~翌年3月31日までの1年間に5日間年休を取得させることになりますが、翌年度の4月1日~9月30日まで期間の重複が生じます。そこで、初年度の10月1日~翌々年3月31日までの期間(18か月)に、5日÷12か月×18か月=7.5日以上年休を取得させることも認められます(実際は8日間の年休を取得させることになるでしょう)。

6 実務的な対応方法
これまで長々と新法について説明してきましたが、新法への簡単な対応方法をご紹介いたします。それは、労働組合と協定を結んで、年休の計画的付与制度(労基法39条6項)を導入することです。あらかじめ計画的に年休取得日を定めることができる計画的付与制度の導入によって年休管理が簡単になるでしょう。
例えば、①夏季、年末年始に年休を計画的に付与し、大型連休とする、②休日の中日に年休を計画的に付与し、4連休を設ける、③夏季休暇などの特別休暇を計画年休に変えることが挙げられます。もっとも、③は労働組合や従業員からの反発が予想されるので、やめておいた方がよいでしょう。できるならば、①で短めの夏休みを作るとか、②がおすすめです。

7 その他注意点
まず、あらかじめ新法によって年休を与えることを労働者に明らかにしたうえで、その時季について労働者の意見を聴く義務があります。そして、その意見を尊重するよう努めなければなりません(新労基則24条の6)。
また、使用者は、新法によって年休を与えた時季、日数及び基準日を労働者ごとに明らかにした書類(年次有給休暇管理簿)を作成し、年休を与えた期間中及び当該期間の満了後3年間保存しなければなりません(平30.9.7 基発0907第1)。また、年次有給休暇管理簿は、労働者名簿または賃金台帳と合わせて調製することができるものであることが求められます。
最後に、施行日である平成31年4月1日以降に基準日を迎える労働者から順次新法が適用されることになります。ですから、施行日後最初の基準日の前日までの年休はこれまでの取り扱いのままとなります。よって、あらかじめ労働者ごとに年休の基準日を確認する必要があります。

※出典:労政時報第3959号(2018年10月12日発行)53頁~66頁 佐藤広一著『年5日の年休取得義務への対応』


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